2007/11/23

市場と競合(後半)

前半では、ジョナサン・ジョースターに対するディオのごとく、ジョセフ・ジョースターに対するワムウやカーズのごとく、「競合の存在は大事」という話を書きました。

競合の存在ッ!!そこにシビれる!あこがれるゥ!
ジョジョの奇妙な百人一首欲しいッ!ノドから手が出るほどッ!

お前の次のセリフは、「今日は昨日の続きです」だッ!

さて、今日は昨日の続きです。

ハッ!!!



思わず一人芝居してしまいましたが、淡々と昨日の続きを書いていきます。

シリコンバレーでソフトウェア業を営んでいると、「お前んとこは、競合に対して何がどう違うのか?」ということをよく聞かれます。
雇用の際、人と何気に話をしている際、資金調達の際、実にありとあらゆる場面で、そのことを説明しなければいけない機会に恵まれます。

資金調達の下準備で、競合情報に関してや、自社の環境についてをエレベータピッチとして用意しておいた方がいいと書きましたが、特に競合の情報に関しては上記のように資金調達以外でもよく話題となる所ですので、調査・まとめをして、口頭で整然と話せるように準備をしておいた方がいいでしょう。

シリコンバレーでもこれら競合に関しての問答においては、答えに詰まる創業者や、「競合はいない」と自信満々に言い放つ経営者もいますが、その場合は、「あちゃー、何も研究してないんだね・・・」という痛い視線を浴びるのみなりますので、本当に参入一番乗りと確信できる以外は、地道にコツコツと競合情報と自社のポジションについては考えておいた方がいいと思われます。

以下、競合に関してよく問われる3つの内容です。
  1. 競合他社と比べて何がどう違うのか?優位性はどこか?
  2. 競合他社に比べてどういうマーケットポジションを取るのか?
  3. 競合他社が自社と同じようなことをやる可能性は?
これらはようするに、「なぜ競合に勝てるワケ?」という確信を導き出すための3つの質問と理解しておくといいと思います。

創業者個人も、「競合に勝てる」という確信を自分自身導き出すためにも、この3つの面をあらゆる角度から見て、矛盾がないか、シナリオとして客観的に納得できそうかどうかを考える必要があります。
1.2.3.とシナリオを作り、「だから競合に勝てるのさ」という結果を頑張って導き出してみて下さい。

また、それぞれの質問においては、答えたところで必ず「なぜ?」という質問が入りますので、ディープに考えておく必要があります。例えば、2.に関して、「ここにポジションを取ります」と答えると、「なぜそこにポジションを取るの?そこにマーケットがあるとなぜ言えるの?」ということを聞かれるといった具合です。

3.に関しては、仮に参入一番乗りで直接の競合が見当たらない環境であっても、「この程度の参入障壁ならば他社がすぐに来るのでは?」という仮想競合まで持ち出される始末です。
これに関しては、自社の持つテクニカル的バリア、もしくはその他の要素でのバリアが何なのか、ということを抑えておくことで、「簡単な参入はたぶん無理」という結論を考えておくと良いです。

以下は参考程度にして欲しいのですが、競合との差別化に関する質問に対して個人的にこれまで最も納得されやすかった答えです。

  • プラットフォームでの差別化
競合が物理的に参入不可能と思われるプラットフォームを用いて展開する。しかもそのプラットフォームは非常に魅力的。(技術的には他社でも開発可能だが、政治的にこのプラットフォームに入れるのは自社のみであるとか、このプラットフォーム上では他社のこれまでの資産が物理的に流用できないというような場合)

  • 技術的な新機軸をベースとした差別化
混沌としつつある市場だが、市場をひっくり返すほどの技術的な新機軸を持っている。新機軸の証拠らしきものもある。(コンシューマ向けVoIP市場においては過去のSkypeのような例)

  • マーケティング的な新機軸をベースとした差別化
混沌としつつある市場だが、全く異なるビジネスモデルで市場にアプローチする。または、他社が見落としているゴールドプレースにバリアを持って一番最初に参入する。

以上3つです。

個人的なこれまでの経験としては、一番上のプラットフォームによる差別化が一番ウケがよく、後の二つについては、単体ではちょっと弱く、合わせ技でウケが良かった。ただし、プラットフォームによる差別化は、なかなかできることではないと思います。
なので、それ以外で創業を考えている人は、技術的新機軸とマーケティング的新機軸の2つの合わせ技で深く考えておくことをお勧めしておきます。

この二つの合わせ技を用いた良い例がSkypeです。
Skypeがコンシューマ向けVoIPサービスをリリースした2003年のVoIPクライアント市場は、Skypeの参入前、既にスタートアップが乱立しており、混沌としていた市場でありました。(僕の前創業会社もその一つ)

彼らは、その混沌とした中で、「俺たちは、NATを優雅に越えるのさルン」という技術的新機軸と、「狙うはコンシューマ市場のみ」というマーケット的新機軸を打ちたて、市場をさらっていきました。

当時のVoIP市場においては、「SIP準拠」、「音質」、「主なマーケットは企業」といった所が競争の軸として認識されていたのですが、Skypeは、「SIP」と「エンタープライズ市場」というこれまでの機軸を捨て去り、「楽々NAT越え」、「狙うのはコンシューマ市場」という上記新機軸でまさに市場をひっくり返したわけです。
もちろん創業者が既にKaZaAで有名であったということも一つありますが、モノが悪ければいずれにせよここまで浸透はしなかったでしょう。

結果、彼らは大きな勝利を手に掴み、今なお巨大なユーザー数を誇るVoIPサービスとして君臨しています。

ただ、一つ注意しなければならないのは、技術的な新機軸を前面に出す場合、投資家に理解してもらえるかどうかというあたりです。
創業者は、当然毎日そればかり追っていますので、自社のサービスが新機軸になり得るかどうかについて、ある程度の見通しはついていると思いますが、投資家から見るとそれが本当に新機軸になるかどうか見分けるのは大変です。というか、たぶんほとんど理解してもらえません。

ですので、創業者個人もここについては単に思い込みだけではなく、できれば第三者が作成した「新機軸としての客観的な証拠」を示すことができればいいでしょう。もちろんニュースサイト等の情報でもいいと思います。
汗水たらして3時間一生懸命説明するよりも、客観的な事実を3秒突きつける方が効果はあります。

次は、「絶妙なタイミングでサービスイン」について書きたいと思います。

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