2007/11/14

Being bought is better than being sold!

今日の夜は表題のようなカンファレンスに出席していました。

「売るよりも買われる方がいい」という内容です。
一瞬、「何を?」と思われる方もいるかも知れませんが、会社の話であります。


今日のカンファレンスは実績のある弁護士やバンカー、そして過去に自身の興したスタートアップを何回かAcquisitionさせることに成功したアントレプレナーが、現在のシリコンバレースタートアップ企業のAcquisition戦略についての状況を、実例を交えながら説明していたので、かなり面白いものがありました。

現在のシリコンバレーにおけるスタートアップ企業は、「会社を買われる」というExit戦略を取っている所が一番多く、また実際に僕の会社もIPOまで行くための戦略より、Acquisitionされるための戦略に重きを置いています。

  • どういう会社が買われやすいか?
買収と一口に言っても様々な理由がありますが、特に多いのは、「単純に特定のハードやサービスをEnrichするもの」ということでした。

買収側の製品をさらに売るためのエサという位置づけのため、現在の製品やサービスに対するユーザー数が多い、少ないということはあまり関係がなく、いかに大手企業の今持っている製品やサービスと関連づけられるか、という部分が勝負所となります。また、それらの多くは、大手が買収後は主力製品に同梱されて一気にバラまかれる、または主力サービスの重要な一部機能を担う役割になることが多いようです。

例えば、GoogleのKeyhole買収は、「新しい市場を開拓するための買収」として位置づけられるものであると思いますが、AmazonのBrilliance Audio買収などは、どちらかというと「既存のサービスをEnrichさせる」ものでした。
そして、このような買収例はユーザー数がたくさんいるようなWeb2.0企業の買収劇と比較すると、たいへん地味な扱いになりがちなのですが、扱う数そのものとしては最も多く、当地でのAcquisition例の多くを担っているようでした。

  • 日本との比較
日本の場合は、大手企業が自社製品内で使えるものを開発しているスタートアップをすぐに買収するということはなく、売り込みに行くとそのほとんどが、「独占契約で」という話につながっていきます。

しかも、すぐに対価を支払ってくれるといいのですが、「上層部を説得するために、ここを無償でもう少しこうして欲しい」であるとか、「無償で共同実験に参加して欲しい」ということを言い出される例が多くあります。

もっとひどい場合は、技術の詳細まで話を突っ込んでおいて、ある日突然同じものを作られることがあったり、さらにはパートナー企業内のエンジニアがスタートアップ側から持ち込まれた技術に対して突如奮起し始め、「自分達でできるから買うな」と社内噴火を起こしてしまい、結局採用ならずという例もあります。(自社内のエンジニア奮起のためだけにアテ馬にされたという悲しいスタートアップもたまにありますが・・)

もちろんスタートアップ企業は大手企業と違って資本力のない会社がほとんどであり、パートナー側の社内政治や手弁当に付き合わされるとすぐに息切れすることになるため、通常は、「開発費を支払ってくれ」という交渉を始めるのですが、結局ワークショップフィーくらいしか支払われず、かといって他をイチから周る体力もなく、結果としてExclusiveで細く長く付き合わされるハメとなるわけです。

こうなるともう新技術を軸に新たな世界を切り開くスタートアップではなく、完全に下請け会社的な存在といえましょう。

もちろん、スタートアップ側にも問題はあって、「自分の会社はこんな大企業と付き合っている」ということを言いたいがために、なぜかたいして得にならないことを一生懸命にやっている場合も多々あります。
それならそこの社員になればいいのに、とも思いますが、そういった行動を起こすスタートアップが地味に多いということも、大手企業側の「ウチと付き合っていることが一つの財産になるわけだから、お金を払わなくてもいいよね?」という勘違いを生んでいる一因となっているわけです。

シリコンバレーに目を向けると、良い製品やサービスを生み出す優秀な頭脳は引く手あまたであり、大手企業は「その技術を独占的に使わせて欲しい」などという寝言は言いません。「独占的でなければ売る気がしない」ということは言いません。(昔は言ってたけど・・)
独占したい場合、企業ごと買収するのが筋として認識されているためです。

そのため、スタートアップ側も最終的に自社ごとパートナー企業等に買ってもらうというM&Aが自然と身についており、またそういう頭脳をちゃんと評価して買収できる企業には、結果としてあらゆる優秀な頭脳や競争力のある製品が集まる形になっているわけです。

また、それら買収した資産も将来的に新たな競争力となって企業に利益をもたらすわけですから、買う方も買われる方も対等な関係で存在できるという風土がシリコンバレーにはあります。

今の日本はまだ大企業信仰、年収信仰が揺らぐことはないように見えるものの、将来的に日本でもシリコンバレーのように、優秀な頭脳ほどスタートアップを起こす世の中となり、受け皿としてIPO以外に海外企業へのExitの道も開けるようになれば、日本企業には結果として二流三流の人材しか集まらなくなってしまうのではないかとすら感じます。

「日本の○○会社はヤバイぞ、細く長くExclusiveだぞ、近づくな!」みたいな噂が出てしまうと、誰もそこの会社に行きたがらなくなるでしょうし、ネットほどこういう噂の伝達速度が速い媒体もありません。

実際にシリコンバレーでは、VCを評価するサイトのTheFunded.comを見て、ひどい評価の所には近寄らないというスタートアップも散見されるようになってきているので、それがそのままM&A企業版になると、すぐにいろいろなことが明らかになる時代になってしまうわけです。

とにかく、こういった情報の流れに対しては、組織よりも個人の方が敏感であることを理解しておく必要があります。

話が長くなってしまいますた。
続きはまた次回。

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