2009/08/22

SVJENのFAQ

先月ですが、SVJENというサイトのFAQにこのブログが参考掲載されました。

そのリンクから飛んでくる人も多いようなので、ここで少し関連事項をまとめて掲載しておきたいと思います。


じゃ、さっそくですが僕のリンクがあったところから・・・

シリコンバレーでは創業者がCEOになるのか?

これに関しては、80年代は皆そんな感じ。スタートアップでも専門職化が進んだのは90年代に入ってからで、現在は外からCEOを引っ張ってくるというのは普通です。
ただし、創業者のトラックレコードがある場合や、強いサービスを持っている等スタートアップ側の方が投資家側よりも強い立場の場合はこれの限りではありません。

トラックレコードのない創業者がVCから資金調達した場合は、VCがトップを引っ張ってきて休む間もなく先へ進み、できない創業者は「オラオラオラ、お前クビ!」って感じになります。

「信じられませんぜ、自分で作った会社なのにクビですぜ!」っていう人が私を含め、シリコンバレー界隈には結構な数を見ることができますが、なぜかみんな明るいのが特徴か。
人によっては一度ならず複数回も同じ経験しているツワモノもいるしね。

このように、日本でならばきっと「乗っ取りか?」となるようなことも、ごく普通の光景であるのがシリコンバレーでのスタートアップなわけです。

ただ、何でもそうですが揺り戻しはあるもので、セミコンやライフサイエンス等、お金のかかる事業は別として、そういうスタイルが創業者にとって本当に幸せなのかどうか、その辺を考えるアントレプレナーが現在は多く出てきているあたりでしょうか。


資金調達について

SVJENのFAQでは、「チームが大事」と書かれていますが、それはその通りです。
ここも結局、そのチームにどれくらい信用に値するトラックレコードがあるかという部分が重要になってくるところ。
銀行が何らかの担保を取ってお金を貸すように、投資家は

● 事業の将来性が良く、かつメンバー構成が良い

● 誰がやっているか知らないが、事業の成長率がスゴイことになっている

と、この2つのパターンのどちらかを担保にお金を出します。
また、当然ですがそういう会社には投資家が集中し、そうでない会社は頑張っても資金調達が難しいというのが今であり、雨が降っていないのに傘を貸そうとする、雨が降ったら傘は貸さない、という投資家も銀行もさして変わりがないというのが現状であります。

ちなみに「メンバー構成がよく、事業の成長率もスゴイことになっている」ようなスタートアップは、業種にもよるものの、既に投資家からの資金調達は必要ないでしょう。

<メンバー構成>ってのは、つまり、

● そのキャピタリスト当人がよく知っている人が入っている

● 信頼ある知り合いの紹介でリファレンスを確実に確認できる人が入っている

● 誰でも知っているような有名人が入っている

と、大きく上記3つに区分できます。

そういう「こりゃ、すげえメンバー構成だわ」と第三者に判断されるような人とは普通、一緒のチームではできないものなので、特に日本人の創業者の場合は何が何でも<成長著しいサービス>を頑張って作ることが重要かと思います。

その成長著しいサービスを作って、投資を引き入れ、互いに協力して成功することができたならば、あなたの会社に投資した投資家達にとって、あなたはいきなり「スゴイ人認定」となり、次回からはあなたがいるというだけで、成長性の見込める事業アイデアを持っている限り、同じ投資家からはアッサリと投資を引き出すことができるようになるわけです。
「前回儲けさせたんだから、今回もチョット頼むよ」という感じですな。

ただ、現状を踏まえると、VCをはじめ投資家から資金調達を行うということは、よほどじゃない限り難しいでしょうなぁ。仮に投資OKでも今ならシリーズAで半分くらいのシェアは普通に持っていかれるのでは。
というか、仮に半分持って行かれたとしても、今、VCから資金調達するまでたどり着ける所は、かなりマシな部類でしょう。
VCも今のポートフォリオを何とかすることができる所も少なく、非独立系や政府系ファンドに食いついている所以外は、皆LP探しに必死という状態のようです。


エンジェルインベスター

よって、エンジェル様の登場なのですが、今はこちらもかなり難しい状況。

エンジェル様の場合は、大体、シリーズA時に10%くらいのディスカウント価格で株にコンバートするConvertible Notesが多いと思いますが、今はどうだろうなぁ・・・スタートアップに投資できる余力のある個人投資家の存在は、極めて稀になってきているで候。
一応、投資家のための簡単な準備についてはココに記載しています。

ちなみにConvertible Notesの本質とは、「企業価値をその場で算出しなくて良い」という点であり、これを用いることで以下の特典があります。

● その後の投資ラウンドがダウンラウンドになってしまい、エンジェルインベスターが損失を被る可能性を避けられる

● 次ラウンドであまりビジネスに関係のないエンジェルが、シェアをたくさん持っているという状態を避けられる

● 形はローンなので、スタートアップ側としては期限内にキャッシュで返しても良い。その場合、エンジェル側としては金利分を利ざやにできる(とはいえ、金利は年3~5%くらいが多いかと)

Convertible Notesとは、この辺、特にその時点での企業価値を算出しなくて良いという点を解決できる互いにとって有効な投資手法というか、ローン契約なわけです。

これがないためによくあることとしては、創業初期、あまりビジネスに関係のないエンジェルインベスターに大量のシェアが渡り、次の投資家や社員がその状態を嫌がる、もしくは創業者本人のモチベーションが下がる、そして結局、株を買い取る買い取らないという話に発展・・・というのがよくあるパターンです。
(実際にこの微笑ましい光景をやっているスタートアップというのは結構多くあります)

続きはまた・・・

2009/08/01

日本です

先日から京都に滞在しています。
来週からはちょっと東京に移動し、その後は北海道→京都もしくは東京と経由してアメリカに戻る予定です。


今回、基本的には製品のセールスで来ているのですが、R&Dのオフショアリングに関しては、最近日本がインドや中国といったオフショアリング代表国に対しても、コスト面では十分対抗できる存在に育っていることに気づき、内容によっては少し長めに滞在してその辺の調査もやってみようかなとも考えてます。
(というか、中国やインドが勝手に高くなっていっただけなんだけどね)

日本ではオンラインコミュニケーションやネットワーク系のスペシャリストを見つけることは難しいですが、特定ゲーム機のグラフィックエンジニアは割合に多くいるようです。
米国では逆にネットワーク系のスペシャリストを見つけることは日本よりも簡単ですが、特定ゲーム機のアプリケーションを作れる人はなかなかいません。

僕自身も10年近くオンラインコミュニケーションに特化している会社をやっていることもありますが、今後、今持っている製品の特性を生かした次のステップを考えているので、このブログを見て僕と一度会ってみたいと思う方がいれば是非ご連絡を。
オンラインコミュニケーションスペシャリストやゲームアプリケーションエンジニアの方(特に任天堂プラットフォーム経験者)は歓迎します。
メールアドレスは、右のAbout Meを開くと連絡先がありますので、そこからどうぞ。

僕自身の紹介はココ。
ただし、今はもう特務上級曹長ではなく中尉です。(どうでもいい情報)

では連絡をお待ちしています!

2009/06/06

E3 in L.A.

6月2日から行われていたE3に行ってきました。

今年は2006年以来の一般公開もありということで、どんだけ盛り上がるのか期待して行ったものの、2006年に比べるとややこじんまりとした感じでありました。

ちなみに今年のGDCも去年に比べるとこじんまりしていたので、さすがに不景気なんですなあと・・・


その他、06年と比べると日本人の姿が圧倒的に少なかった所かな。㌧フルの影響でしょうけど。
私の知り合いのジャパニーズパブリッシャー達も「豚インフルで全員ストップです。イー!!スリィ!!」と言っていた。(しかし日本も既に感染者一杯いるからたいして変わらないとも思うんだけど)

会場は、Westがハード系やアイテム系でSouthがソフト系の展示。でもSouthもWestも奥の方はガラガラ。
06年は全部詰まっていて、それでもスペースが不足気味でさらにベンチャー規模の展示者数も多かったためか、ベンチャー専用スペースにもいろいろ面白いのがあったけど、さすがに今年はゲーム業界も不景気であります。という感触を受けました。

今回は、PSP GoとかXbox360のモーション入力系(これは展示はナシだったけど)が話題だったかな。
ランチの時に向かいに座ったプレスの人と話をしていたら、彼はXbox360のモーション入力が大変気に入った様子だったらしく、詳細をいろいろと教えてもらえました。

しかし、モーション入力系は既に日本のケータイでもあるし、基礎技術も数年前からあったので、あとはコンソール機にいつ搭載されるのかが注目でしたが、とうとう今年初搭載ってことで楽しみの一つ。

ただ、これ使ったゲームのテストは相当体力が必要になる気がするのは気のせいでしょうか?(笑
これまでボタン操作のみだったのが、体を使うわけですからな・・・動け!そこで無駄に動け!ジャンプしながらさらにジャ~ンプしてすかさずグレネード!とか、無尽蔵な体力が必要になりそうですが。

PSP Goは、どうもUMDが消えたっぽい・・・
これって、とうとう「販売店様切り捨てごめんネ」ということなんでしょーか?

デベロッパーやパブリッシャーにとっては朗報だな。くらいで一瞬スルーしそうになったけど、よく考えたらすごい大胆な決断。
いや、しかしいずれはこうなるのですから、先陣を切ってそれに着手したソニーには素直に拍手。(僕が販売店の人間だったら、かなりブーイングしただろうけど)

そんなこんなで今年のE3には、そんなに心躍る展示はなかったけど、ある意味「ゲームメーカーのビジネスモデルがひっそりと変わり始めた年」として覚えられることになるのかも知れません。

さて、今回のE3で個人的No.1は、M2とかいうハンドヘルドゲーム機でした。
なんというか、ちょっと一昔前の形状というか、「DS Liteの上画面取りました。しかしその分無駄に重厚にしますた」的なアピアランス。

こういうのって、毎回出てくるけど、毎度のごとくひっそり消えて無くなるため、都度カメラに収めることがもはや個人的責務にもなっています。



「ゲームが最初から100個以上入ってアルヨー」
「○○なゲームも××なゲームもできるアルヨー」

みたいな呼び込みで客足を遠のかせていたので、すんなりと撮ることができた。

ちなみに、「これってネットにはつながるの?」と聞いたら、「つながらないけど、ソフトはダウンロードできる」みたいな答えが返って来たので「???」みたいな顔してたら、「なんか、アタシよく分からないから上司を呼んでくる」と言われたので、そのまま逃げちゃった。
(今思えば、上司を呼んでもらってM2をネタ買いしても良かったかもと後悔)

その他は、ずっと某メーカーのミーティングルームでミーティング。
ミーティング後はそのままI-5をかっ飛ばしてきて、5時間半ちょいでサンノゼに着きました。

2009/05/08

こんな時代

㌧フルの勢いある昨今ですが、家から徒歩5分圏内の学校で感染者が発生し、休校状態となりました。
いやはや、怖い昨今です。


でも誰もマスクなんぞつけてません。
その代わり、スーパーでは殺菌ペーパーを見かけるようになってきました。カートを触る前に掴む所を拭いてねって感じのやつです。

しかし・・・今、アメリカから日本に行ったら、「なんか変な菌がいっぱいいる汚い国から来た人」みたいな扱いを受けるみたいなので、日本行きには躊躇するところではあります。

ちなみに私の知人は、先日、日本で熱が出たため病院に行ったところ、「熱のあるガイジンがきてる!」みたいな感じですごい勢いで周りから避けられたとか。
今の日本で、ガイジンが熱を出したら大変な差別に合うという挑戦をしてくれた彼に乾杯。

ビジネス方面の話をすると、僕を含めて周りの現状としては、どうにかしてサービスをお金に換えるよう模索している所が多いと思います。一つでも機会を逃すとクローズする道しか残っていない状況なので、僕もですが皆必死。
また、可能性のありそうな土俵があるということになれば、iPhoneアプリのごとく皆一斉にそこへジャンプインするため、可能性のありそうな土俵もあっという間にレッドゾーン化し、結局儲かるのは胴元だけ・・・という図式になりがちです。

iPhoneアプリに関しては、反面、大企業は固い商売を心がけ、必ず売れるという商品のみにフォーカスして展開する傾向が強いため、スタートアップはその軸からズレた新しいジャンルでは勝負がしやすくなります。
例えば、大企業はそこに過去の実績が既にある「確実に売れそうなタイトル」を出してきます。それ以外の売れるかどうか分からないチャレンジングな商品をこういう時代にイチから制作することはあまりありません。

スタートアップは、大企業が景気の良い時代ならば、「ちょっと面白そうだからやってみようか」と手がけていたであろうジャンルに手を伸ばせば、そこに商機がある可能性が十分にありますし、そもそも少人数であればとりあえず自分達が食べていければいいわけですから、いろいろなチャレンジがしやすい時代ともいえます。

大企業に大きく出てもらうことで開拓部分(iPhoneアプリのユーザーへの認知)をお願いし、自分もちゃっかりそこで儲けるというストーリーを描ければ、少人数が生き残る分には十分でしょう。
とにかく、大企業とは同じ土俵で戦っても同じ技では対抗せずに、次の窓が開くまでコツコツと実績を積み上げていくことが大事です。

また、こういう時代においては、「大企業の定義」も考え直す必要があります。
何をもってして大企業か、と言われれば、普通は「従業員がたくさんいる」や、「売上げがたくさんある」、または「歴史が長い」などに囚われがちですが、そうではなく、「一般に固定化した商品イメージを植えつけることに成功した、もしくは成功しつつある企業」に変えた方が良いです。

WEBサービス企業でいうと、例えばAlexaやCompeteでそのサービスの月間ユニークビジターが50万~100万人を越えているようなサービスを持つ会社は、いかに1年前に創業した会社であろうが、「既に大企業」と捉えた方が良いでしょう。

そういったネットを味方につけたスタートアップは話題にもなりやすく、相手もまだスタートアップ(=こちらとたいして変わらない)だと思ってついつい似たようなことをやりたくもなりますが、そういう所とは一切、技で競わないことです。
似たような技ならば全然通じないと思った方がいいでしょう。

マーケティングなことに関しては、普通にYouTubeだとかWebのニュースやブロガーに依頼して掲載してもらうだとかは、既に使い古された感があり、かつ、たいして効果的でもありません。有名人の興すスタートアップならば話は別ですが、無名人ならばやらないよりは多少マシくらいな感じです。

僕が東京でゲームソフト会社をやっていた頃なので結構昔の話ですが、とある知り合いのゲームソフト会社がキャラクターの画像集やポスター類ではなく、ゲーム内に出てくる「きしめん」をコミケで販売した所、なぜかそれが話題となってニュースで取り上げられ、その効果できしめんが売り切れ御免となり、さらに「きしめん売り切れ状態継続中」が話題となって、「何だか知らないけど本体が売れた。きしめんの方が売れたけど」という訳の分からないマーケティングで大成功だったということがあります。(本人、狙ったわけではなさそうでしたが・・・)

特殊な例ですが、こういう時代はそういう発想こそが求められているのかも知れませぬ。

2009/01/21

2009年

あれっ、気がついたら年が明けていましたね。

あけましておめでとうございます。(今さら)


今年は大統領も新しくなり、アメリカは何やら国全体がワクワクしているような雰囲気です。
特にオバマ新大統領は、既に「現代版環境にやさしいニューディールをやる」と発表してまして、もうシリコンバレー界隈のグリーンテック業界は盛り上がりまくりですよ。
いやいやいやいや、オバマさん、そろそろこの辺の貧弱貧弱ゥな通信ネットワーク環境を素早く何とかしてくださぁぁあい。

ただし、新大統領になったからといって、現在抱えている経済問題がすぐに解決するわけではなく、さすがのオバマ大統領でもしばしの苦戦は予想されますが、こういうリセットの時期にすごいタイミングで期待率の高い新大統領の出現というのは、奇跡に近いものなのではないかと思います。

いやほー、ミラクルミラクル。

景気は人々の深層心理によっても左右される部分がありますから、それが良い方向に早く働いてくれれば、2期目前の頃には希望の光が見えているかも知れませんねえ。
逆にそれまでに光が見えていなければ、すんごい勢いで白人保守勢力部隊から叩かれ、現場から引きずり下ろされることになるのかも知れませんが・・・。

あと、いろいろとスッタモンダしていますが、今後基本的にアメリカ国内で成長見込みのある市場は、輸入に対してクローズドになっていくはずです。
さらにそれにプラスして、自動車産業の大打撃に見られるよう米国民に対してこれまでのような消費力を期待することは少なくてもここ数年は無理な状況になるでしょう。

よって日本の製造業にとってはダブルパンチ佐藤気味となり、多くの米国内オフィスが規模縮小化しそうです。

スタートアップに関しては、2001-2002年頃の状況に酷似しています。
VCはレイトステージ以外のスタートアップをしばらくは相手にできないでしょうし、無償ユーザー数を集めてなんぼみたいなビジネスも広告費が削減されていく中、大きい所以外は非常に舵取りが難しくなってきます。
コンシューマ向けビジネスは、そのテクノロジーを核にエンタープライズ系に軸を変え、「売上げで生き延びる」方向に走ります。

前回もそうだったけど、こういう時代は、「強みを生かしつつ、全世界を視野に、安く作って、安く多く売る」が基本姿勢であり、次の時代の窓が開くのを待っていることが大事なわけです。

さあ、こういう時代、どんな分野が伸びるでしょう?
今、その分野で、「安く作って、安く多く売る」を実現できるスタートアップにとっては、次の時代で主役に躍り出ることのできるチャンスな時期であり、過去を振り返ってみても、こういう時こそがスタートアップにとっては面白い時代のはずであります。

さらに、いつぞやのエントリーでも書きましたが、今は、一国のみならず世界を舞台とした「作る」「売る」「買う」に関して、数多くのサービスが存在しているので、(ここが2001年頃とは違う所)実は前よりも楽に「安く作って、安く多く売る」がやりやすい時代になっているということを忘れてはなりませぬ。

そう、考え方によってはちょっと前よりもかなり良い時代になっているんですよ。

そして時代とテクノロジーは好景気であろうが不景気であろうが、前へ進むこと以外はできず、消費もしないわけにはいかない。
目に見えてひどくなる産業はひどくなるけど、実力を発揮する産業はこういう時代でこそ発揮するわけであります。

最後に、

オバマさん、そろそろこの辺の貧弱貧弱ゥな通信ネットワーク環境を素早く何とかしてくださぁぁあい。アゲイン。

ところで、今年のGDCは3月23日からです。