2007/11/25

絶妙なタイミングでサービスイン(1)

製品やサービスをどういうタイミングでリリースできれば、最も大きな効果を得ることができるのか。

絶妙なタイミングとは、どういうタイミングのことをいうのか。

「正しい場所に正しいタイミングで存在する」というのはどういうことなのか。

この辺はテック系スタートアップの成功のカギを握る重要な部分であります。

今日はこの辺のことを、僕の経験と感想を織り交ぜながら書いていくことにします。


ただし、一回で終わりにするにはあまりにもディープな議題であるため、何回かに分けて掘り下げて行きます。

ここ数年、シリコンバレーにおいては大企業がコンシューマサービス系のスタートアップを買収するというマーケットが加速しています。

10年くらい前はシリコンバレーといえども、コンシューマ系ソフトウェアサービスのスタートアップがどしどしと消えていった時期もありました。

当時、キラ星のごとく現れては消えていったPoint CastやmyWebOS、その他大勢の製品/サービス達が、もしも今という時代を生きていたならば、ひょっとしてすごいビジネスに育った可能性もあったのかも知れないし、逆も然りで、もしもFacebookやDigg、Twitter等、今の時代に輝いて見えるサービス達が10年前に登場していたならば、その夢は儚く散っていたのかも知れません。

全てはタイミングさ

僕の感覚では、昨今のコンシューマ系サービスの場合、ちょうどGoogleがIPOすると囁かれ始め、実際にIPOしたあたりの2003~2004年頃を分岐点として、急激に花が開いてきた感がある。(でもデータがないので何とも言えぬ)

その前までは、僕の前創業会社でも、「コンシューマ市場にスタートアップが直接リーチすることは難しい。ターゲットをエンタープライズ市場に切り替えよう」というボードミーティングが何度かあったことを覚えているし、周りを見渡してもビジネスモデルとしてコンシューマを直接ターゲットにするというのはバブル崩壊後は、あまり見かけなくなっていったのを覚えている。

時代というのは似たような移り変わりをするもので、ビジネスモデルでいえば、エンタープライズとコンシューマを行ったり来たりと繰り返すし、プラットフォームでいえばPC(クライアント)やLinux(サーバー)と携帯、その他組込み系を行ったり来たりと繰り返す。

そして、その時折において、ある組み合わせで大成功する企業が出ると、「その組み合わせで我々もやるべきだ!コア技術にサービスを乗せてコンシューマ市場に行こう!」とか、「サービスとコアを切り離し、コア部分に特化してエンタープライズ市場を切り開こう!」といったような議論が社内で沸騰し、我も我もと同じような考えを持つ他社が一箇所に参入することで、資金もそこへ集中されていき、その組み合わせの市場が盛り上がるようになってくる。

  • その時、そこにいるファーストムーバ型
一番タイミングとして良いのは、市場の盛り上がりのちょっと手前からその場所の住人となり、「あの組み合わせで我々もやるべきだ!」と、他社の市場参入を促すことのできるタイミングでサービスをリリースする、いわゆるファーストムーバ型。
うまくいくと市場の牽引係のポジションを取れるし、その市場が注目された時には真っ先に紹介されるようになる。

もちろんファーストムーバの抱えるリスクは、市場が見えてきてから参入してくる企業の比ではないし、資金調達が難航する可能性もあるけれど、うまく同じ土俵に他社を引っ張ることができれば市場は盛り上がり、当たった時の突き抜け具合も素晴らしいものがある。

例を挙げるならば、

市場とプラットフォーム:コンシューマ市場、PCプラットフォーム
製品もしくはサービス:写真共有サービス
そこにいた会社:Flickr

といった具合。

YouTubeの場合は、コンシューマ市場が認められてから少し経ってからの参入であったので、Flickrほどのリスクはなかっただろうけど、Flickrと似たような範疇に入るだろう。
彼らは、コンシューマ向けのビデオ共有サービスにおいては、最も参入が早かった。最終的にはいろんな意味でFlickrを逆転したけど、きっと当初はFlickrのビデオ版という位置付けで考えていたんだろうと思う。

ちなみにセカンドライフあたりは面白くて、今注目されているような100%コンシューマ型ではなく、ちょうどバブル崩壊後の会社だけあって、サービスの提供先がエンタープライズ向け主体。あの頃の時代というのを表現している数少ない生き残りだと感じる。(一つ付け加えると、セカンドライフはファーストムーバではない。参加者が3D世界でモノを自由に作り、それで遊ぶという歴史はもっと古い。その頃、現金取引はできなかったけど。あ、ひょっとしてそこが新しいのか?)

  • その時、そこにいる同時多発型
その時、そこにいる型としてはもう一種類ある。
ファーストムーバ型は他社よりも半歩先にサービスをリリースできた企業のことを言うけれど、実際においては、「同時多発型」が最も多いだろうと思う。

これは、その名の通り、自社がリリースするタイミングで似たようなサービスがポロポロ出ちゃった、というパターンのことを指す。そして、このパターンにハマった場合は、まだ顧客層の固まっていない時期に少数のスタートアップと最初の競争をしなければならないので、正直、「なんで同じ時期に来るんだよー!」とムカつくことこの上なし。相手も同じことを思ってるだろうけど・・・。

同時多発型の場合は、市場が花開く前に先に頭一つ抜け出していて、他社の追従を許さない形になっているのがベストだけど、同じような時期に同じようなことを考えている人というのは意外と多い。
ただし、前々回説明したように、似たような時期に似たような競合が出てくるという市場環境は、自社の考えが正解に近い素晴らしい兆候であるということも忘れずに。

僕の前創業会社を例にすると、僕達が製品発表した前後1ヶ月間だけで3社が同じような市場にエントリーしてきていたし、最終的には6~7社程の競合がひしめき合う市場となった。そして2003年になるとSkypeが登場、その後数年内に完全に勝負が決まった。ただし、Skype以外の他社も2005年頃にちゃんといくつかがExitを果たしたので、結果から見るととてもいい市場だったのだろうと思う。

ファーストムーバのみで他社が追従してこない市場というのはちょっと怖いけど、同時多発型が出る市場というのは、VoIPの時のように、その後大きく発展するパターンが多いため、このタイミングというのも決して悪くはないだろう。

ちなみに僕の前創業会社は、前に述べたように、ちょうど時代の変わり目であった流れもあり、途中でコンシューマ市場から撤退し、エンタープライズ系サーバー分野の方向へ走って行ってしまったため、そのおこぼれには預かれなかった。(個人的にはビジネスモデルがエンタープライズ系へ移行される段階で解雇となったので、その後どのように市場を形成しようとしていたかは分からないけど)

次回は、「競合から頭一つ抜け出したサービスを勝者決定前にリリースするタイミング」という話を書きます。


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