2008/01/21

ビジネスプランについて

そういえば、以前ビジネスプランの内容をアップすると宣言しておいて、その後忘れてました。
例の12 Magic Slidesというやつ。

どうもこの定型は、とあるシリコンバレー在住の経営コンサルタントが好意で作ったもののようですが、先日、なぜか僕も知人経由で手に入れることができたので、せっかくだからここに公開していきます。(怒られないよね?)

ちなみに、今となっては、ローカルのVCから「最近のは同じ型ばっかだな~」と言われるにまで浸透したこの形式ですが、読み返してみると、エグゼクティブサマリーの内容そのままみたいな感じなので、サマリーが先にできていれば、こっちは作りやすいかと思われます。

さて、では以下に内容を示していきます。


準備について
その前に準備体操を一つ。
以下、スライドを作成する前、およびプレゼン前の準備項目です。
  • 各々のスライドの行は、5-10行間で作成する
  • スライドは、会社名とロゴを入れたオリジナルなものを作る
  • プレゼン前に、チームメンバーの紹介をサラっと30秒くらいで説明
  • プレゼン前に、市場概要と現状の問題、顧客の説明、自社のユニークな部分を軽く30秒くらいで説明
  • プレゼン前に、会社の沿革を↑こう思うに至った経緯を含めて1分くらいで説明(信頼できるソースがあれば、そのことについてもサラリと事前に言及しておく)
準備については以上ですが、ちと二つほど注意点があります。

一つ目は、一枚のスライドに細かい文字で詰めすぎないという点です。
「言いたいことを全部詰め込みたい!」と、細かい文字で内容を詰めすぎてしまうと、かえって見づらくなり、見てもらえなくなります。(相手が老眼だったらもう終わり)
中身は、インパクトのある箇所のみ記載し、それ以外は全て口頭で説明するだけで良いです。

二つ目は、全ての情報を詰めなくてもいいという点です。
これは一つ目に似ていますが、一つ目は「単に分かりやすくする」という意味で中身を詰めすぎない、という内容でしたが、二つ目は自社にとって最も重要な情報は、「あえてぼかして書くか、もしくは書かない」という意味です。

普通、VCとはNDAを結びませんから、自社の情報が後でどうなるかは分かりません。ポロっと話をされたことが競合他社に伝わり、実装されてしまう可能性だって否定はできないわけです。(VC経由で情報が流出したかどうかの本当の所は分かりませんが、こういう事件は実際に時たま耳にすることがありますし、他のアントレプレナーの中にも核心情報の取り扱いには注意しているという人が結構います)

とはいえ、シリコンバレーというアントレプレナーの多い土地柄も考えた場合、同じ時期に同じようなことを実行している人も多いだろうこともあり、偶然であることの可能性の方が高いとは思いますが、一応念のため、もしも肝となる核心部分があれば、2回目以降のミーティング時に話をする等、取り扱いには気をつけておいた方が良いでしょう。

さて、では実際のスライド内容の説明に行きましょう。

Title Slide
タイトルスライドはトップのカバーページのことです。
以下、タイトルスライドに必要な情報ですが、スライドに関しては、予め自社のフォーマットを作っておいた方が良いでしょう。
  • 社名
  • 作成日付
  • 相手(VC)の社名
  • 会社のロゴ
  • キャッチコピー(一言で)
  • いくら必要としているか?
カバーページには上記の情報を記載しておきます。


1. Over View
スライドの一枚目は、Over Viewです。
ここで相手の注目を引き寄せることができないと、その後の発展が難しいということみたいです。

以下、掲載例です。
  • 簡易市場説明 (この市場は今後5年間でこのように大きく伸びると予測されている!等をソース付で)
  • 2~5のインパクトのあるメッセージを準備 (例:Fortune 100のTOP5に入る企業が弊社製品のベータ版を現在使っており、正式版リリース後には必ず製品を購入するという内容の契約済み!等)

2. The problem
二枚目は、現状の問題点説明です。
  • 何が問題か?を短く説明(例:現状のシステムはココがおかしい!)
  • 数字で具体的な要素を出す(例:顧客は年間100億円もの無駄なコストを支払っている!顧客は年間30%もの無駄な時間を旧システムに費やしている!等)
  • それら情報の具体的なソースがあれば提示する

3. The Solution
三枚目は、問題点を解決するソリューションの説明です。ここは非常に重要で、このページの説明が終わった所で相手の顔色に変化がなかったらオシマイと言われていますので、気合を入れて説明しましょう。
  • 製品/サービスのメインを分かりやすく手短に記載
  • その製品/サービスで何が顧客の大きなベネフィットとなるのかを記載
  • 製品/サービスの簡単な組み合わせ図を記載
※ さて、この説明が終わった所で相手の顔色を見てみましょう。つまらなさそうですか?そうですか、じゃあオシマイです。ここから先は世間話でもしておきましょう。題材はそうですね、「ジョジョの奇妙な冒険」についてでいかがでしょうか。ナニ?興味を持っているようだ?そうですか、じゃあジョジョを封印して次のページへレッツらゴン!


4. Opportunity and Market
ここでは主に、自社製品/サービスにおける市場性を説明します。
  • マーケットの動向(5年後の全体マーケットサイズと、自社がフォーカスする分野のマーケットサイズ)
  • 5年後に自社が市場の中で何%のシェアを取るのか?(と、なぜ取れるのか?という説明)
※ グラフで記載するのが望ましい。
※ 自社の売上げが5年後に$100ミリオン達成!となるような市場性のある分野が望ましい。


5. Technology
ここでは、自社製品のアーキテクチャを説明します。
できるだけ相手に分かりやすく説明するため、ダイアグラムを用いたスライドの作成が必須であります。
  • 技術の全体像(コアと周りの技術を分かりやすく積み木のように掲載。よく見かけると思いますが、一番下にサービス・プラットフォームがあって、真ん中にサービス・フレームワークがあって、一番上がサービス・インターフェース+矢印がサービスをデリバリーする顧客に伸びているとかのアレですアレ。母さーん、アレ取ってー)
  • 自社技術とビジネスの橋渡し部分を掲載 (その技術が誰のどこの部分で使われるのか?)

6. Unique Competitive Advantages
6枚目では、自社が競合と比べてどのような特徴があるかを説明しますが、技術面でユニークである以外にも、他社に比べてチーム内に豊富な経験を持った人材がいるだとか、他社にはないようなパートナーが既に存在しているだとか、IPを保有しているだとかの情報を記載します。俺は他の連中とは違うぜ~!という部分を思い切り書き出して下さい。

と同時に、それらに対する質問の答えを以下のように用意しておきます。
  • 自社のみが持つユニークさであるか?(YES or NOだけど、NOならそれはユニークとは言わない・・・)
  • 他社に比べて自社のユニークさは10倍以上のアドバンテージがあると思われるか?(ちょっとこれは何の10倍なのか根拠に欠けますが、一応書いておきます)
  • どれくらいの期間、その優位性が続くと考えられるか?(1年以上と答えられるようにしておいた方がいいでしょう。もちろんその理由も)
  • 顧客はなぜそのユニークさに惹かれるのか?(なぜ顧客はあなたの会社の製品を使うの?)

ようするに、他社に比べて競争優位な部分の説明と、それが本当に優位であるかどうかを確認する部分ですが、以前のエントリーでも触れていますので確認して下さいまし。


7. Competitive Landscape
7枚目では、競合と自社を含めて何が技術的に違うのかという部分の説明です。他社製品と自社製品の機能差を表にしているような図って巷によくありますが、まさにそれ。
ちなみに僕は6と7を、7を中心に一枚のスライドにしています。

※ ここで、気をつける箇所
  • 競合はいないと言ってはいけない→前にも説明しましたが、「市場がない」の裏返しです
  • 自社の持つ機能で強調したい部分は思い切り強調して書く
  • 顧客を中心とした観点から見る (細かい箇所を競ってもダメで、顧客がこれがあるから使う!というような部分を記載)

8. Go to Market Strategy
マーケットにどういう戦略を持って参入するのか、しているのかを説明します。図で記載するのが望ましいです。
  • 顧客のプロフィール (誰が顧客なのか?まだいなければ、想定顧客は誰なのか?)
  • パートナーのプロフィール (誰があなたのパートナーなのか?)
  • 誰がどのようにあなたの会社の製品/サービスを販売するのか?
  • 価格はどのくらいを想定しているか?
  • どのように顧客を見つけ出すのか?
  • バリューチェーン、セールスサイクルの説明
  • マーケット戦略において、他社との違いがあればその説明
  • マーケットの市場性

9. Finantial Roalmap
5年間のファイナンシャルロードマップを記載。(横は年表示。縦には売上、費用、税引き前利益、投資額、ヘッドカウント、顧客数というのが普通)
  • シリーズAとしていついくら必要であり、シリーズBがあるのならばいついくらになるか、ということも掲載。
  • 投資資金の使い道の記載 (ここまで製品化する、こういう企業とパートナーシップを結ぶ等)
※ ここで気をつける箇所
  • ちゃんと自社のビジネスモデルを理解して書いているか?(このビジネスモデルでこの売上げはねぇだろ!というようなプランではないということが大事。現実が見えているかどうか試される所です)

10. The Team
チームメンバー紹介です。これまでの経歴等を思い切り褒めちぎって書きましょー!

ちなみに僕はいつもここで変な汗をかきますが何か?


11. Current Status
現状と今後のマイルストーン説明です。
現状では何が終わっているのか?(技術開発、ビジネス開発含め)また、今後どのようなマイルストーンがあり、いつそれが終わるのか?
ちなみに僕の場合は、今から1年間分と今後5年間分くらいのタイムラインの図を2つ用いてマイルストーン説明しています。
1年間分の方はより詳細に、5年間分の方は大体の目安として、というような内容ですな。


12. Summary
最後はサマリーで最も印象に残したい内容を3つにまとめ、短く箇条書きにします。以下はその例。
  • 市場の説明 (この市場は必ず大きく花開く!他社よりもアドバンテージがある!等)
  • (見込み)顧客情報、パートナー情報 (現状を記載)
  • VCにサポートして欲しい内容 (Financingやチームの強化等)

プレゼン終了後
プレゼンの終了後は、以下のことを忘れずにフォローします。
  • 内容全体についての感想及び意見交換
  • どのような過程を経て投資をクローズさせるのか、というあたりを確認
  • フォローアップミーティングのセットアップ(もしできれば)

その他
僕の場合は、ビジネスプランに入らなかった部分を別途以下のようにAppendixとして、ビジネスプラン本体とは切り離して追加しています。
以下は参照程度に参照参照。(いかん、疲れてきた)
  • ミッション
  • 製品のスクリーンショット (デモで見せられる以外の部分)
  • 製品の機能詳細
  • ターゲット顧客の概要
  • ターゲット顧客のバリュー
  • どう顧客に製品を届けるのか、という部分の詳細戦略
  • 顧客をどう保持し続けるのか、という部分の詳細説明
  • 競合情報のさらなる詳細
  • 自社製品の市場位置づけ (マトリックスを用いて表示)
  • アクション・マトリックス (製品の中で、どの機能を捨てて何を加えるのかという部分をマトリックス表示)
  • なぜこのビジネスモデルなのか?の詳細説明
  • 組織図
  • ビジネス上のマイルストーン (Exitまでを記載)
  • 会社沿革
  • 製品のバックグラウンドとなるテクノロジーについての説明
  • Exit Plan
  • マーケットのニュースクリップ (ビジネスプランで用いたソース他)

とまぁ、12 Magic Slidesはこんな感じです。
いかがでしたでしょうか?

ふと思ったのですが、これって特にVCに対するプレゼン以外でも使えますな。
例えば、車を買う時に嫁さんを説得するために使うだとか・・・現状の車の問題点はこうで、欲しい車はそのソリューションを持っている!みたいな。
まぁ、「チームメンバー俺一人!」みたいな感じになっちゃうでしょうが。

あと、プロポーズとかでも使えるんじゃ・・・?

ただ、プロポーズで使う場合は、「The Problem~君の問題点~」や、「Go To 君 Strategy」の使用には十分に配慮することが必要。
もちろん、「君という市場に競合はいない」などとは言ってはいけませぬ。(競合がいたらいたで問題だけど)

では、これらを駆使して資料作りを頑張りましょー!

1 コメント:

ビジネスマナー さんのコメント...

とても魅力的な記事でした!!
また遊びに来ます!!
ありがとうございます。。